アンズ(杏 / 杏子)Prunus armeniaca

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早春の澄んだ空気の中、サクラに先駆けてふんわりとした花を咲かせるアンズ。

古くから薬用や食用として親しまれてきましたが、その可憐な花姿は観賞用としても格別の美しさを持っています。春の光を吸い込んだような優しい色彩は、見る人の心を穏やかに解きほぐしてくれるようです。

目次

花写真

2021.03
Nikon D7100
ドイツ南西部

花の基本情報

和名:アンズ(杏 / 杏子)
別名・通称:カラモモ(唐桃)、アプリコット
学名:Prunus armeniaca
独語名:Aprikose(アプリコーゼ)
英語名:Apricot
科属:バラ科 サクラ属
分類:落葉高木
原産地:中国(ヒマラヤ西部〜中国北部の山岳地帯)
開花期:3月から4月
花色: 白、淡紅色
実色: 橙黄色
背丈:2m〜5m(剪定により調整可能)
花言葉:「乙女の恥じらい」「早すぎた恋」「不屈の精神」

特徴

中国から渡来した当初は薬用(種子の「杏仁」)として重宝されましたが、現在では生食やジャム、果実酒など幅広く楽しまれています。

耐寒性に優れており、春先の冷え込みにも耐える強さを持っています。ただ、開花時期が早いため、遅霜に当たると実付きに影響が出ることもありますが、その凛とした立ち姿は庭木の主役としても十分な風格を備えています。

育て方

場所: 日当たりと水はけの良い場所を好みます。春の遅霜から花を守るため、北風の当たらない暖かい壁際などが理想的です。

水やり: 地植えの場合は基本的に降雨で十分ですが、乾燥が続く夏場や実が肥大する時期にはたっぷりと与えます。

剪定: 冬の休眠期(12月〜2月)に行います。日当たりを良くするために混み合った枝を間引く「透かし剪定」が基本です。

受粉: アンズは1本でも実がなる「自家結実性」の品種が多いですが、異なる品種を混植するとより実付きが良くなります。お住まいの地域で入手しやすい代表的な品種は以下の通りです。

ドイツの場合: 伝統的で信頼性の高い ‘Ungarische Beste’(ハンガリーの最高級)や、大実の ‘Nancy-Aprikose’、耐寒性に優れた ‘Hargrand’ などが一般的で、これらは1本でも結実(selbstfruchtbar)しやすい性質を持っています。

日本の場合: 「平和(へいわ)」や、糖度が高く生食に向く「ニコニコット」、「ハーコット」などが育てやすく人気です。

肥料: 12月〜1月頃に有機肥料を、収穫後にお礼肥を与えると翌年の花付きが良くなります。

アンズとウメの見分け方

アンズは、梅(ウメ)によく似た花を咲かせますが、梅よりも一回り大きな花弁と、開花時にガク(萼)が後ろに反り返るのが大きな見分け方です。

アンズとウメの比較図
アンズとウメの比較(gemini作成)

実の比較(アンズとプラム)

アンズとプラム(スモモ)の実は非常によく似ていますが、植物学的な特徴によって明確に見分けることができます。

アンズとプラムの実比較
アンズとプラムの実比較(gemini作成)

アンズ(杏)

  • 表面: 桃のような細かい産毛に覆われており、マット(つや消し)な質感です。
  • 断面・タネ: 熟すとタネが果肉からポロッと外れる「離核(りかく)」の性質を持っています。タネは平たい形をしています。

プラム(すもも)

  • 表面: 産毛はなくツルツルしています。新鮮な実には、「ブルーム」と呼ばれる白い粉(果粉)が付着しているのが特徴です。
  • 断面・タネ: タネが果肉にしっかりとくっついている「粘核(ねんかく)」であることが多いです。タネは楕円形です。

【コラム】歴史と文学にみるアンズの横顔

ヨーロッパで囁かれた「媚薬」の噂

西洋において、アンズは長い間「媚薬」としての性質を持つと信じられてきました。その芳醇な香りと官能的な果肉の質感が、人々の想像力をかき立てたのかもしれません。

実際に、シェイクスピアの『真夏の夜の夢』では、妖精の女王ティターニアがロバの頭に変えられたボトムをもてなすご馳走の一つとしてアンズを挙げ、ジョン・ウェブスターの『マルフィ公爵夫人』にも象徴的なアイテムとして登場します。古くから、単なる果物以上の特別な存在として、人々の心に深く根付いていたことが伺えます。

謎に包まれていた原産地

学名に armeniaca(アルメニアの)と冠されている通り、かつてヨーロッパではアルメニアが原産地だと固く信じられていました。実際にアルメニアでの栽培の歴史は非常に古く、文化の一部となっています。

しかし、近年の遺伝子研究により、その真の起源は中国にあることが明らかになりました。さらに、紀元前3000年頃のインドでも栽培の痕跡が見つかっており、アンズは人類にとって最も古くから馴染みのある果物の一つだったのです。

なぜ、桜ほど一般的ではないのか

これほど古くから親しまれているアンズですが、日本では桜のように「どこにでも植えられている花木」とまではいきません。梅に似た丸みを帯びた花びらは、桜とはまた違った可憐な美しさを持っているのに、少し不思議に感じることがあります。

一説には、アンズや梅が咲く時期はまだ風が冷たく、外でゆっくりと花を愛でるには少し寒すぎるからかもしれません。反対に、桜が咲く頃には陽気も安定し、人々が外で過ごす時間が長くなります。

人々の目に触れる「時間」の違いが、桜をこれほどまでの国民的スターに押し上げたのかもしれませんが、静かな早春の庭で独り占めするアンズの美しさは、何物にも代えがたい趣があります。

ドイツの街角で見つける「早起き」なアンズ

ここドイツでも、アンズの木はそれほど一般的ではありません。近所で見かけることがあっても、どこかひっそりと佇んでいることが多いようです。

アンズはとても「早起き」な植物。2月や3月のわずかな暖かさに誘われて誰よりも早く芽吹きますが、その後に訪れる厳しい遅霜(Spätfrost)に花をいためてしまうことも少なくありません。近所の木に実がならないのも、春を急ぎすぎてしまったアンズと、厳しい冬の名残とのせめぎ合いの結果なのかもしれません。

カメラに収めようにも、まだ凍えるような寒さの中でシャッターを切るのは一苦労。受粉を助けてくれる蜂たちでさえ、この時期はまだ寒すぎて活動的ではありません。桜が咲く頃には、彼らも「待ってました!」と言わんばかりにブンブンと忙しく飛び回りますが、アンズの周りはしんと静まり返っています。

それでも、華やかな桜のシーズンを待つ前に、寒さに耐えながら独り咲くその姿には、自分だけが知っている「秘密の春」を見つけたような、静かな特別感があります。

いけばな

花材として使った暁には、写真を載せたいと思います。

花材:
花器:
花型:

花材として

花に対する個人的レビュー

このレビューは、育てた感想、いけばなで使う時の個人的感想、備忘録です!

アンズ
総合評価
( 3.5 )
メリット
  • まだ花が少ない春先に開花する
デメリット
  • 花期が短い
  • 入手し難い

日記・成長記録

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